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          グループブログFPN(板倉雄一郎氏寄稿)

「経営とは、株主資本の管理」ということが結論です。

一般的に「経営とは?」と問われた経営者は、普段の「作業」を思い浮かべ、やれ「能力の高い社員を集めること」だとか、「リーダーシップ」だとか、「組織の管理」だとか、様々な作業面から思いついたことをその答えとすることが多いわけです。

ですが、以上の「作業」は手段であって、その目的は、「株主から預かった資本を、彼らの期待収益率以上の利回りを、事業によって達成する」ということに集約されるわけです。この意味では、ファンド運営も、事業会社も、金融機関も、すべて全く同じ結果を追っているわけです。不動産投資でも、株式投資でも、債権への投資でも、その商品の性格と詳細に違いがあっても、すべて全く同じお金の理屈の上に成り立っているわけです。

ですから、投資家(企業の場合株主)の期待収益率(=株主資本コスト)(a)以上の事業利回り(投下資本利益率)(b)を実現するのが、経営者として最低限の義務であって、(b)―(a)をスプレッドといいますが、それがどれほどプラスになるかが、すなわち経営手腕ということになります。

経営とはこの一点に集約されるのです。

板倉雄一郎氏は、かつてインターネット無料接続サービスで旋風を巻き起こし、今はベンチャーキャピタル経営、投資家として活躍されています。

「投資」という側面から企業経営を見た場合、板倉氏の仰る「経営とは株主資本の管理である」というのは、その通りなのでしょう。直接的には異論はございません。ただ同意できるのは、企業を資金の投資先として捉えた場合、という前提付きです。

私は経営者ではありませんので、経営の何たるかを分かっているのか問われると辛いのですが、本ブログは「思考のトレーニング」でございますので、企業に勤めるものの視点と意見ということでご容赦頂きたいと思います。

私は、ここ数年来言われるところの株主至上主義的な考え方の経営論に異論ありです。

企業のステークホルダーは株主・経営者・従業員・顧客とあるわけで、私は、その誰もがハッピーになるバランスを上手く保つのが経営なのだと思っております。

昨今のアメリカ的な企業経営の捉え方は、あまりにも株主だけに囚われ過ぎ、また同じく昨今流行の「顧客志向」至上主義的な話は、あまりにも顧客だけに囚われ過ぎ、4つのステークホルダーの中のそれぞれ1つだけしか見ることができていないような感さえ与える程です。

経営者は、経営者として企業をどのようにしていきたいのかという自らのWILLを明確に(ある意味我侭な程に)示し、更に、株主や顧客のことを考えるのと同じように従業員満足に想いを馳せることの重要さを忘れてはならないと思います。CS(Customer Satisfaction)と同じ重さでES(Employee Satisfaction)が語られることの少なさに不満を感じるのは、私が従業員という立場にいることの甘さでしょうか?

企業が利益を追求し事業の拡大を行うこと≒株主資本の管理、それらを実現していくためには当然顧客のことを第一に考えなければ上手くいくはずがなく、事業を行なっていくためには従業員と団結して事に当たらなければならないのだとすれば、どれを最初に論じようとも卵が先か鶏が先かの議論なのかもしれません。

声高らかに書いているのが恥ずかしく成る程当たり前の事だとは思うのですが、どうしても株主と顧客しか頭に無いのでは?と思える論調が世間一般的に強く感じ、一度声をあげてみたくなった次第です。


企業が株式を公開するのは、資金調達のためです。そういう意味では投資家(株主)は、投資した資金を企業経営という形で運用し、適切な利潤をもたらしてもらわなければならないということは分かります。しかし、「経営とは」と題した場合、経営は株主のためにのみ行われるものだとは決して思いません。もちろん板倉氏はその前に〔ファイナンス〕と括っているのですが。