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TB:インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞
CNET Japan Blog:梅田望夫・英語で読むITトレンド

梅田氏がプロ棋士の羽生善治氏(現:王位・王座)に「この10年のITの進化とインターネットの普及によって将棋の世界の何がいちばん変わったか」と聞いたところの回答が下記の内容。

「将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということだと思う。しかし、その高速道路を走り切ったところで大渋滞が起きている。自分達の世代の感覚からすると、全く信じられないスピードなのだ。」
「将棋の駒の動かし方すら知らない小学校高学年生が5年くらいでプロ棋士にまで駆け上がる」ということが将棋界では起きているそうです。そして更に梅田氏が「そのあとの大渋滞とは、どういうことなのか」と聞いたところ、

「確かにそのレベルまでは一気に強くなれるのだが、そこまで到達した者達同士の競争となると、勝ったり負けたりの状態になってしまい、そこから抜け出るのは難しい。一方、後ろからも高速道路を駆け抜けてくる連中が皆どんどん追いついてくるから、自然と大渋滞が起きる。最も効率のよい勉強の仕方、しかし同質の勉強の仕方で、皆が高速道路をひた走ってくる。結果として、その一群は確かに一つ前の世代の並のプロは追い抜いてしまう勢いなのだが、そうやって皆で到達した所で直面する大渋滞を抜け出すには、どうも全く別の要素が必要なようである。」

将棋は、定跡を覚え、棋譜を研究し、他の棋士達と勉強会を開き、切磋琢磨して強くなっていくものでした。定跡や棋譜だけでも何万~何十万通りという情報です。

現在は、パソコンの中にデータ化され、紙をペラペラ捲ることなくスムーズに勉強ができます。実際に棋士が集い勉強会を開催するのも、現在は、ネット対局で腕を磨くことができます。プロ棋士もネット対局をする時代なのです。

ITやインターネットの進展により、情報の共有化と知識の習得に要するスピードが飛躍的に速くなったのは、ビジネスの世界のみならずプロ棋士界においても同様のようです。


大渋滞を抜け出す要素とは

羽生氏が言うところの「大渋滞」を抜け出すのに必要な別の要素とは何なのでしょうか?「高速道路」についてプロ棋士の世界とビジネスの世界に共通点があるのであれば、「大渋滞」を抜け出すのに必要な要素にも共通点があるのではないでしょうか。

ビジネスについて言うと、ある一定の情報を得ることができる環境下において、より高い成果を生み出すための差となるポイントは、得た情報を如何に活用することができるかという点に尽きると考えます。

職種に限らずテクニカル・スキルは勉強して身に付くものです。あらゆる情報はネット上に溢れています。もちろん仕事場のリアルな世界にも溢れています。同じスキル・同じ情報量下にあれば、差になるのは、ビジネス・ファンダメンタルです。

コミュニケーション力やリーダーシップ力等といった「対人関係力」、クリティカルシンキングやロジカルシンキングといった「思考力」。思考力を突き詰め、経験を重ねていく中で身に付く「大局観」。これらが全てと言い切ることは出来ませんが、私はこういった力がビジネスにおいて“差”となる力だと考えています。

将棋を指すにあたっても「思考力」や「大局観」といったファンダメンタルスキルが重要であることは同じではないかと想像してみました。

そしてそれはおそらく、将棋においてもビジネスにおいても、ITやインターネットが進展・普及する以前から、とても重要なファクターであることに変わりはないのだと思うのです。